台本のないドラマが、今年も阪神競馬場で始まった。
前夜:上半期最後のG1、軸を決めた夜
宝塚記念前夜。
いつものように予想動画をあさった。YouTubeをはしごして、追い切り評価を読んで、各馬のデータを調べた。
今回、軸はダノンデサイルに決めた。
ダービー馬。ドバイシーマクラシックという海外G1でも接戦を演じた実力馬。今回のメンバーで言えば、格は一枚上のはず。
でも実は、データより先に「好きだから」があった。
毎回堅実な走りを見せてくれるダノンデサイル。派手さはないけど、毎レース一生懸命走ってる。気づいたらファンになってた。だから今回は単勝も買おうと思った。
ヒモも決めた。
- 17番レガレイラ——理由、ルメール。笑
- 9番コスモキュランダ——有馬記念2着のグランプリ実績。お祭りレース強いかも。鞍上は横山武騎手、安田記念でガイアフォースに騎乗してた騎手。
- 15番マイユニバース——追い切りが「買い目に入れざるを得ない」と専門家が戦慄するレベルの仕上がり。日経賞でハイペース耐性も証明済み。
ワイド・馬連・単勝と組み合わせて、合計3000円。
ヒモまで決めて、就寝。
当日:またしても仕事。でも今日は違う。
宝塚記念当日も、仕事。
「毎回このパターンよ」と自分でも笑ってしまう。ダービーも、安田記念も、宝塚記念も。G1の日は仕事。
でも今日は少し違う気持ちがあった。
ダノンデサイルの単勝も買ってる。「応援する」という気持ちが、いつもより強い。仕事しながらも、頭の中ではデサイルのことを考えてた。
定時。お疲れ様でしたと同僚に挨拶して、足早に退勤。
帰り道、野菜屋さんに立ち寄った。
冷やし中華に必要な材料が、きゅうりだけ足りていなかったから。
きゅうりを買って、自宅へ。
帰宅:夏を先取る冷やし中華と淡麗グリーンラベル
部屋着に着替えて、冷やし中華の準備を始めた。
宝塚記念は春のG1の終わりを告げるレース。同時に、夏の到来も感じさせる。ならば今日のおつまみは冷やし中華で夏を先取ろう——数日前からそう決めていた。
具材をカットして、タレも手作りして、完成。使った食器も先に洗って片付けた。
お風呂に入る。仕事のストレスと汗を洗い流す。顔にパックもして、髪も整えて。
準備完了。
冷蔵庫から冷やし中華と淡麗グリーンラベルを召喚。ソファに腰掛けて、宴会スタート。

棒ラーメンで作った冷やし中華は、コシがあってやっぱり美味しい。淡麗グリーンラベルをごくごく飲む。夏だ。
PCを開いて、JRAの公式サイトへ。
宝塚記念のレース動画をポチリ。
宝塚記念本番:戸崎さん!デサイル!お願い!
画面がなんか見づらい。
モヤみたいなのがかかってる?
ゲートが開いた瞬間に気づいた。
雨、降ってる。
良馬場じゃないの?汗
1番のダノンデサイルに視線を集中させる。スタートは出た。でも他の馬たちが一斉にポジションを取りに行き、デサイルはインの中団後方あたりに。
1コーナー、2コーナーを過ぎながら思う。
「戸崎さん、その位置大丈夫だよね?包まれてるけど……」
向正面でジワリと位置を上げていく。でも3〜4コーナーを回ったあたりでも、まだ中団後方のインに位置どってる。
「戸崎さん!デサイル!デサイル!お願い!戸崎さんなんとかして!」
4コーナーを過ぎて、最後の直線。
阪神の直線は短い。このまま終わる——そう思ったとき、戸崎さんがデサイルを内から一気に外へ出した。
「よし!あとはデサイル!突き抜けろ!お願い!届いて!お願い!デサイル!デサイル!」
何回もデサイルの名前を叫んでいた。きっとその顔は人に見せられる顔をしていなかっただろう。笑
でも顔を変形させながら叫び応援した気持ちが届いたのか、デサイルがグングンと伸びてくる!
先頭はコスモキュランダ!?そう、ヒモのコスモキュランダが序盤から逃げの手を打ち、まだ粘っている。デサイルが届けば——そう思ったその時。
来たのはピンクの帽子、メイショウタバル武豊。
「また武さんですか!笑」
「嘘でしょ?先週勝ちましたよね?笑」
その後ろにクロワデュノール。やはり来たか。でも私のデサイルもダービー馬!頑張れ!
グングン伸びてくるデサイルはゴール前でコスモキュランダを交わした。
3着。笑
結果:また武さんですか!笑
- 1着:メイショウタバル(武豊)
- 2着:クロワデュノール
- 3着:ダノンデサイル
- 4着:コスモキュランダ
- 単勝01——0円。
- ワイド01-15——0円(マイユニバース競争中止)。
- ワイド01-17——0円(レガレイラ7着)。
- 馬連全て——0円。
3000円、静かに消えた。

武豊、2週連続G1制覇。安田記念シックスペンスに続いて、宝塚記念メイショウタバル。57歳で2週連続G1制覇って、どういうことなの笑。
レース後、武豊のインタビューを見た。
亡くなったメイショウタバルの馬主・松本会長が、雨を降らせてくれたと。タバルが有利になるように——天国から。
思わず泣いた。
競馬って、本当に台本のないドラマだなと思った瞬間だった。
そしてクロワデュノール。春古馬三冠は重馬場に阻まれて2着。でも強かった。重馬場じゃなければ——とも思うけど、天気も実力のうち。それが競馬。
台本のないドラマ
馬券は全部外れた。3000円消えた。
でも今回は悔しさより、感動の方が大きかった。
コスモキュランダ、4着だったけど逃げ粘って本当に頑張ってた。馬券は外れたけど、嬉しかった。
マイユニバース——競争中止。急性心不全で天国へ。
調教があんなに輝いていた馬。このレースに向けて、一番一生懸命準備してきた馬。ゴールの先まで走り続けようとしてたんだね。天国でゆっくり休んでね。お疲れ様でした。
そしてダノンデサイル。3着だったけど、満足してる。
最後の直線でインから外に出して、最後まで伸びてきてくれた。私の中で一番速かった。毎回一生懸命走るダノンデサイルが、やっぱり好きだ。
一生懸命って、人の心を動かす。
それは人も動物も関係ない。
それぞれに色々なドラマがある。
春のG1の終わりを告げる宝塚記念。夏を先取った冷やし中華を食べながら、ごくごくビールを飲みながら、私は競馬の素晴らしさを改めて感じていた。
台本のないドラマ。
それが競馬だ。
武豊さん、メイショウタバル、松本会長——おめでとう。そして天国のマイユニバース、ありがとう。
楽しんで死のう。それだけでいい。
いきるでした!

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